昔、オートバイを購入してくれた客のお兄さんが来店した。
「お久しぶりです。ゼファーのナナハンが欲しんですけど・・・。」
お客の『希望』・『要望』・『予算』などを聞くため、話をした。
“弟さんがウチで買ったバイクが調子が良かったから”か、“バイク購入後の弟さんに対する対応が良かった”からか、“扱っているバイク・陳列しているバイクの品質が良く見える”からか、ひょっとして“私の話す内容が良かった”からか・・・。いずれにせよ、ウチへの印象が良いので、そのお客は会話に嘘がない。
オートバイ接客業を長くやっていると、その人の嘘と間違いがわかるようになった。
気付いていないフリをしたり、正さなかったりするが、全てわかっている。
嘘にも“騙そうとする嘘”や“陥れようとする嘘”や“見栄・虚勢を張る嘘”や“出し抜こうとする嘘”や“「得しよう!」「損させてやろう!」といった嘘”などなど、多種あるが、私は初対面で嘘をつきながら近づいてくる人間を信用しない・・・。
しかし、オートバイの商談において、嘘の無いものは大変珍しく、それがあった日はただただ楽しい。
一方私は、商売とはいえ、“「10万円で仕入れた物を15万円で販売している」といった大きな嘘”を最初についているから、それ以上の嘘はつかない。
その反面、純粋で剥き出しの希望&要望はかなりえげつない。
今回のお客さんの希望・要望はこんな感じだ・・・
・ゼファー750(RS不可)
・年式 不問
・走行距離 エンジンをオーバーホールする為、不問(腰上or全バラかは一任)
・エンジン黒塗装
・外観は錆&傷がほぼ無いモノ
・ドレミZⅡ外装・黒塗装
・ホイール ゴールドorブラック(純正色不可)
・YBシボリまたは同じ感じのハンドル
・ハイスロ
・11月末までに納車
・予算 1※※万円(乗り出し)(「わざわざウチを頼ってきてくれたんだから、希望予算より10万安く製作するよ!」と男気をみせた)
なんとかなりそうなので、中古車探し兼、製作を引き受けた。
10月2日
業者オークションにて落札した車両を引き取りに行った。
探して仕入れたゼファー750がコレだ!!
1991年式
実走 13795km
JMCAのモリワキ集合管が付いたゼファー750
極上の当たり車両だ!!
納期まであと2ヶ月、頑張らないと!!
今回のようにお客さんの希望要望で、店頭に無い車両を探したり、レストアしたり、オーダーを受けて製作する時に、必ず聞いてもらう話がある・・・。
「重要なのは3つ、『品質』 と 『金額』 と 『時間』 です。この中の1つしか選べないとすると、どれを選びますか?」
極端な話、
★品質を選べば、誰もが羨む好調車両を手に入れられるかも知れませんが、金額は相場の倍~3倍になるかもしれないし、納車も1年2年待ってもらう事になるかも知れません・・・。
★金額を選べば、相場の半値で手に入れられるかも知れませんが、見た目ボロボロの壊れまくる車両で、納車もいつになるかわかりません・・・。
★時間(納車・納期)を選べば、1~2週間以内に手に入れられるかも知れませんが、ボロボロで最初から壊れている車両で、価格も無理して買ってくるので、相場の3倍かも知れません・・・。
あなたはどれを選びますか?
夢み心地の客は9割方、この会話で現実を突きつけられ、帰ります・・・。